マニエリスム

『脱獄計画(仮)』という驚愕のビオイ=カサーレス体験:Dr. Holiday Laboratory『脱獄計画(仮)』

こまばアゴラ劇場で、Dr. Holiday Laboratory『脱獄計画(仮)』という演劇を観た。作・演出、山本伊等。 なんて挑発的な。最高だった。 アドルフォ・ビオイ=カサーレスの小説『脱獄計画』を原案にした演劇ということで興味を持ったのだが、え、こんな原案…

作者が登場するとき、テクストではなにが起きているのか?:クレメンス・J・ゼッツ『インディゴ』雑考

クレメンス・J・ゼッツ『インディゴ』(犬飼彩乃訳)は、奇妙な小説だ。どこがどう奇妙かは読み手によって異なるだろうが、まず言えるのは現実の扱い方のユニークさだ。 主題のひとつである「インディゴチルドレン」とは、現実世界においては、ニューエイジ…

『重力の虹』のスロースロップはどこへ消えたのか?:トマス・ピンチョン『重力の虹』雑考

トマス・ピンチョンの傑作小説『重力の虹』です。 さまざまな物語を内包し、重ね合わせて語られる大複合小説として、不動の地位を保ち続けています。僕も大好きな小説です。 第二次世界大戦末期、アメリカ人のタイロン・スロースロップ中尉はイギリス軍に出…

下書きを、並べてみる。

ずいぶん長らくブログを放置している。twitterを始めてから手をつけなくなった現状を鑑みるに、所詮140文字で収まるようなことしか考えてなかったのかな、と厭な思いに駆られる。メディアによって使い分けを、と思っていたはずなのに、実行に移すのは難しい…

雑記。

渋谷パルコPart1地下一階の書店〈リブロ渋谷店〉の店員さんが達筆で驚く。領収証の但し書、「書籍代」の文字。 手慣れたものでボールペンですらすら書いてくれるのだけど、何気ない崩し字がバランスよい。最も印象深い「書」の字はこんな感じ。……横線をすっ…

全能の監視者について

まず―― 「マニエリスムが誠実とは、いったいどういう意味だ?」 と、二つ前の記事の文責帰属を持つ主体なるものに問いたい。つまり、4月25日の僕に対して。 話の前提として「それはお前本人だろ」という他者の声をひとまず棚上げする。これは、今の「私」か…

迷子の風景:高山宏『近代文化史入門』雑感

……よく道に迷う。 いや、人生の意味に悩んでいるのでなく、言葉そのままの意味でしばしば迷子になるということ。分刻みで移動するか、さもなくばひきこもるかでなければ21世紀の東京を生きる資格はないのかもしれないが、迷うものは仕方ないのだ。 しかし…

額装と軸装、あるいはフレーム:速水御舟展 雑感

「イメージは枠から外へ出なければならない」と、バチェコは弟子のベラスケスに言ったそうだ。 昨秋、引っ越しした山種美術館で速水御舟展が催された。自分では買わないだろう本や行かないだろう店なんかがあるように、眼に入らない場所というのが存在する。…

ハプスブルク展 雑感

先週のことですが、乃木坂の国立新美術館へハプスブルク展を観に行きました。 終了週だったからか(すでに東京での展覧は14日で終わり、1月から京博へ巡回するようです)人が多すぎて、もうそれだけで疲れました。ハプスブルク家にまつわる絵画中心の展示で…