現代語訳

【リライト】曲亭馬琴『近世説美少年録』発端部3

近世説美少年録 3 白蛇と大鳥 大江弘元は手勢を指揮して洞穴の前後を塞いだ。彼の精兵三十余人が逃げる山賊を斬り伏せ、生け捕り、勇猛果敢に休む暇なく賊を誅し続ける。 一方、川角連盈は慎重に隙を窺っていた。この死地を切り抜けようと頼みの手下十余人…

【リライト】曲亭馬琴『近世説美少年録』発端部2

近世説美少年録 2 大江弘元 阿蘇沼氾濫の夜。 本陣にいた大江備中介弘元は、襲いくる沼水の勢いに抗えず押し流された。ほとんど溺れながらも水面へ顔を出し、懸命にもがくうち肘近くに流れてきた盾を取った。それを胸に押し当てて泳ごうとしたが、水勢は緩…

【リライト】曲亭馬琴『近世説美少年録』発端部1

近世説美少年録 1 阿蘇攻め 足利義稙が二度目の室町将軍に就くと、周防、長門、豊前、筑前、安芸、石見、山城の七ヶ国の守護、大内左京権大夫多々良義興がその功労から管領代に就任した。管領職は細川、畠山、斯波の三家のみ任じられる役職だったため、極め…

【現代語訳】曲亭馬琴『南総里見八犬伝』第九輯中帙附言(稗史七法則)

『南総里見八犬伝』は、文化十一年(1814)の春、平林堂(弓張月の版元)から出版しようと第一輯の企画を起こした。しかし、すでに平林堂主人は七十歳の老齢、長編の刊行を果たしきるには心許ないと、版元仲間の山青堂に譲りたいと申し出られた。私はその意…