シンプルイズベスト

 ようやく『月に囚われた男』をDVDで観た。ネタばれにご用心ください。















 いろんな意味でシンプルさが効果的に機能している秀作。無駄をそぎ落としたストイックな設定とストーリーと登場人物と語り口。B級感溢れる映像も滑稽味があっていい。
 監督デビュー作には低予算をアイデアで補った小品ながら秀作佳作ってあると思うけど、そういうの大好き。『レザボア・ドックス』やら『フォロウイング』やら『π』やら『マルコビッチの穴』やら。
 以下、シンプルさに関する覚書――。
 1、先行するSF映画へのオマージュについて、特に『2001年宇宙の旅』は意識せずにはいられない(ケヴィン・スペイシーがそのように演じてるし、なによりあのエフェクトでは仕方ない)。その結果、予想が裏切られることでガーティのキャラクターもいっそう引き立つ。性格付けを二次創作によって省略したってこと。これほど「正しい」オマージュの使い方は珍しいのでは?
 2、ガーティのデフォルメされた似顔絵が感情表現を十分に成立させてしまう。あの顔イラストは二十年前でも受け入れられただろうか? メールの絵文字顔文字にもすっかり慣れたことで、感情を表す記号が観客の意識に届いてしまってる(それとも漫画の段階でその域に達していたのか?)。ひょっとして僕らは「文字」を増やしてるってこと!? すると、英語圏の人たちは初めて表意文字を手に入れたことになるぞ。
 ……って、さすがに大袈裟すぎる(-.-;)